こうのとり療法 は妊娠体質づくりのための治療法です

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P4(プロゲステロン)と黄体機能不全

最近、「黄体機能不全」についての問い合わせが増えています。
一般的には黄体期(高温期)のみが問題視されますが、
実際には卵胞期(低温期)の状態が深く関与していますので、
改善のためには月経周期全体を見て治療方針を考えていく必要があります。

この黄体機能不全の診断基準がありますが、
ここでは

・高温期の持続 12日以下
・基礎体温の低温期と高温期の温度差 0.3度未満
・子宮内膜の厚さ 8mm未満
・プロゲステロン 10ng/ml未満

の状態なら改善が必要と考えています。

黄体機能不全を考える上で重要なホルモンは「P4(プロゲステロン)」。
P4とは、
下垂体性・絨毛性性腺刺激ホルモンの作用で、合成・分泌が促進され、
黄体・胎盤・睾丸・副腎皮質で生成・分泌されるホルモンです。
E2によって厚くなった子宮内膜をより
着床しやすい環境に変えてくれます。

妊娠されていない方の基準値は以下のとおりです。
・卵胞期:1.7ng/mL以下
・排卵期:4.9ng/mL以下
・黄体期:0.2~31.6ng/mL

このホルモンが安定しないと、
高くなる原因としては、
多嚢胞性卵巣症候群や本態性高血圧、
低くなる原因としては
卵巣機能低下症、黄体機能不全、無月経、排卵異常、流産、
胎盤機能不全、汎下垂体機能低下症などがあります。

P4が低いと、
着床しても不安定だったり、子宮内膜が維持できず流産することもあります。
またE2がP4受容体の発現に関係していますから、
E2が低いとP4も道連れ的に下がります。

P4が高くなると、
血糖値が上昇していきます。
血糖値の上昇は排卵抑制や着床抑制に傾くので、
この場合は糖尿病に使用する薬の服用をすることで、
妊娠しやすくなることがあります。

TES(テストステロン)と卵の質

「卵の質が悪いから妊娠できない」。
と言われる患者さんが少なくありません。
卵の質を決める要素は幾つかありますが、
そのうちの一つがTES(テストステロン)という男性ホルモンです。

テストステロンは精巣の間質細胞(ライディッヒ細胞)で、
コレステロールから合成される内因性男性ホルモンです。

何となく女性と(特に妊娠)とは関係のなさそうなホルモンですが、
このホルモンは卵胞の発現や妊娠に大きな影響を与えています。

女性の基準値は10~60ng/dl.とされていますが、
妊娠というのであれば20~50ng/dl.の範囲が適当だと思います。
(より理想を言えば25~45ng/dl.だと嬉しいです)

この値が高い時は多嚢胞卵巣症候群や妊娠が考えられ、
低い時は肥満や高血糖、そして拒食ややせ体質、運動不足、コーヒーの摂取があります。

テストステロン値が低いと顆粒膜細胞が少ない卵子ができます。
ここからの話は仮説ですが、現時点では多分正しいと思います。

《エストロゲンの作用で原始卵胞は発育卵胞となり、
卵細胞周囲の一層の胚上皮が肥大して顆粒膜となります。
テストステロンはこの時期にの卵成熟の過程作用することで、
卵子の質に大きな影響を与えていると考えられます》

テストステロンが低値になると、受精卵の分割に
悪影響が出て胚盤胞率が下がってしまうことになります。

それではテストステロン高値だとどうなるのでしょうか。
これはからだが妊娠した状態に近くなるので、
例え顆粒膜細胞の厚い、一見良さそうな卵が採れても、
受胎にはつながりにくくなりますし流産率が高くなります。

卵子の質を追求するあまり、妊娠しにくいからだになるのは、
本末転倒になりますので、

・DHEAを個人輸入して摂取
・Dr.からの処方でもTESの測定なしでの摂取は相談
・3か月以上の摂取の場合は再度TSEの測定
・サプリメントで亜鉛などの摂り過ぎには注意
・筋トレのしすぎ

こういった事も念頭に入れながら卵の質アップを行ってください。

E2(エストラジオール)と卵

E2(エストラジオール)の値と卵の成長について。

D3時のE2値は幾つくらいが良いのでしょうか。
これは年齢によっても随分と異なります。

E2の基準値は
・卵胞期:11~82pg/ml.(前期),52~230pg/ml.(後期)
・排卵期:120~390pg/ml.
・黄体期:9~230pg/ml.
ですが、
20歳代ならD3でのE2は15~30pg/ml
40歳代ならD3でのE2は40~60pg/ml
排卵前なら250pg/ml.は欲しいでしょうか。
D3で20歳代は80、40歳代なら100を超えると妊娠しにくくなります。

患者さんと話をしていますと、
「E2=卵胞ホルモン」
と思っている方が少なくありませんが、
E2とはエストラジオールのことで、
卵胞ホルモンはエストロゲンのことです。
E2はエストロン、エストリオールなど
約30種類ある卵胞ホルモンの一つとなります。なので「=」ではないんですよ。

このE2は卵胞周囲から出るホルモンで、
子宮内膜を厚くし頚管粘液を分泌しますので、
排卵後の卵子輸送や着床の基盤作りを行ってくれます。
後日アップしますが、E2値は黄体機能にも大きく影響を与えるホルモンなので、
このホルモン値の改善は卵だけでなく着床にも関係しているのです。

E2値は良く卵の質を表わしていると言われますが、
実際はそれほどでもありません。
E2低値になるケースは、
ピルやカウフマンなどによる卵巣機能低下や拒食症などで
高値はHMG製剤の使用による卵巣過剰刺激症候群や、残胞の存在、
肝硬変などでしょうか。

ちょっと難しい話ですが、
E2は性ホルモン結合グロブリン(SHBG)と結合して活性されています。
このSHBGは肝臓で産生されますので、
肝硬変などの肝臓疾患はE2の値に大きな影響を与えます。
ということは肝臓に負担をかける、高脂肪食やアルコールは控えたほうが良い、
ということになります。

AMH(アンチミューラー管ホルモン)が0でも妊娠できる

「AMH(アンチミューラー管ホルモン)が一桁や「0」なので、
治療しても妊娠できません。」

とDr.に言われたからどうにかして欲しい、
といって駆け込んでくる方が非常に増えました。
原因としては、今年に入ってから、多くの不妊専門病院で
AMHを調べるようになったからだと思います。

AMHは発育過程にある卵胞から分泌されるもので、
発育過程の卵胞の量によって数値が変動し、
年代と共に減少するとされています。
それ故、「最も早く正確に卵巣予備機能の低下を感知できる検査」
として広く行われるようになってきたのです。

ですが、このホルモンは様々な状態で大きく変動することも分かり始めてきました。
特に、
・出産後授乳中
・強めの誘発を行った後
・カウフマン療法後
などは大きく下がりますし、
・多忙で生理周期が乱れた後
・体調を崩した後
なども下がるようです。

また定期的にAMHはが低値を示しても然程気にしなくても良いかもしれません。
実際にAMHが「0」であっても、
多くの方が妊娠できていますので。
これはAMHの検出限界の関係で、
実際に卵胞が存在してもAMHが「0」となってしまうからだと考えています。

私が考えるに、AMHの測定意義は、
「誘発の強さを決めるための検査」なのだと思います。
AMHが低ければ、クエン酸クロミフェンだけでも、
またショート法を行っても採れる卵の数はほとんど変わらないのが実態なのですから。

FSHを下げるためにどうすればよいか

実際のところ、FSHが多少高くても質の良い卵はできると思います。
ですが、FSHが高くなってきたというのは卵巣機能が落ちてきたことを示唆します。
患者さんとしては、必要以上に思い悩む事はないと思いますが、
少しでも健全な妊活を進めていく上でFSH対策は最も重要なポイントの一つといえます。

ではFSHを下げるためにはどうしたらよいのでしょうか。

おさらいとして、FSHが高くなるのは、
・卵巣機能が低下している
・FSH感受性が低下している
・混合型
の3タイプがあります。

一般的には、一度上がったFSHは下がらないとされています。
ですが、当治療院の実績では多少時間はかかりますが、
FSHを下げることはできると考えています。
まず、卵巣機能が低下している場合です。
組織の老化や若さというのは、ほぼ血行の確保と比例しています。
分かりやすいのが肝臓でしょうか。
脂肪肝は血行が悪くなり肝機能が低下しますが、
肝臓マッサージを行うことで脂肪肝が改善し、
肝機能もまた改善していきます。

肝臓だけではありません。
関節内の血行が改善されれば関節年齢は若くなりますし、
同様に卵巣を取り巻く血行の改善は卵巣機能を改善します。
この方法のために、当治療院は、
子宝マッサージを行い体液循環の改善を行うのです。
これは反射を利用した卵巣の血流改善法と、
動脈の性質を利用したマッサージによる血流改善を組み合わせて行います。

次に、FSH感受性です。
これには体脂肪率、ストレス、睡眠(メラトニンの関与)といった、
様々な要素が絡んできます。
ですから体脂肪コントロールを含む生活習慣指導を
その方のホルモンの状態やからだの状態に合わせて徹底するのです。

もちろん、ホルモンが作用しやすい至適温度になるように、
基礎体温コントロールを加えることは言うまでもありません。
他にも、お灸を利用したり子宝ストレッチで骨盤内の血流改善を行います。

こういった事を複合的に行う事で、
FSHの値を下げて行くのです。

メラトニンと妊娠

メラトニンというホルモンがあります。
最近だとアンチエイジングで知られるようになったものです。

このメラトニンが不妊で悩む方々の
間で知られるようになったのは、
抗酸化物質であるというだけでなく、
ホルモンバランスの改善に役立つからです。
また、夜間勤務の看護師にこのホルモンバランスが崩れることも分かったからでしょう。

実際に、不妊症でお悩みの方は、
このメラトニン産生量が低下することが少なくありません。
そこで、メラトニンのサプリメントが
着目されるようになったのです。
ですが、メラトニンは、
ちょっとしたことで改善することができるホルモンです。
なので、個人的にはサプリメントはお勧めできません。

改善方法としては、
・なるべくその日のうちに床につく(できれば23時までに)
・少なくとも6時間は睡眠時間を取る(できれば7時間)
・日中に外光を全身に浴びる時間を30分以上とる
(晴れた日は、UV対策をし、日傘をさしてでも問題ありません)

この3つを行うだけで、
メラトニン値は上昇します。

メラトニンを安易に摂取すると、
メラトニン値が上がり過ぎ、それが不妊の原因になります。
(月経が止まってしまいます)
メラトニン値を整えることは、
他のホルモンバランス改善につながります。
骨盤内の血液循環の改善のために散歩をお勧めしていますが、
夜間よりも、朝方~夕方までに(なるべく午前中)行うと、
メラトニン対策にもなり一石二鳥です。

妊娠は特定のホルモンだけが司るのではありません。
全体的にバランスのとれた状態を目指し、妊娠しやすいからだを手に入れましょう。