まず初めに、次の質問に答えてみてください。
問 次のうち正しいと思われるものはどれでしょうか。
① 20歳代女性の卵母細胞の方が老化している
② 40歳代女性の卵母細胞の方が老化している
③ どちらもあまり変わらない
恐らく、ほとんどの方は②を選択された事と思います。
ですが、正解は③。
これを知っているかいないかで、治療を受けるスタンスが大きく変わってきます。
以前、“体細胞”を利用したクローン羊、ドリーがメディアを賑わしました。
ところが、このドリーちゃん、今まで行われてきたクローン動物とは異なる成長を見せたのです。
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、
このドリーちゃんは寿命の割に老化が早く、そして死んでいったのです。
なぜ、こういった結果になったのでしょうか。
それは、体細胞という老化した細胞を基に生まれてきた関係で、
元の体細胞の残りの寿命しか生存できなかったのでは、と言われています。
この話は、卵の老化にも同様のことが言えるのです。
「細胞老化」という言葉があります。
耳慣れない言葉かもしれませんが、
細胞には「細胞分裂ができる回数」がほぼ決まっていて、
その分しか生存することができないのです。
同じ女性が20歳代で産んだお子さんと、
40歳代で産んだお子さんがいるとします。
もし、卵が老化していくのであれば(細胞老化が起きているのであれば)、
40歳代で産んだお子さんの寿命は相当に短くなることでしょう。
ですが、実際にそこまで寿命が異なるというのは聞いたことがありません。
言い換えると卵の老化(細胞老化)は考えなくてもよいといえます。
しかし、同じ女性でも20歳代と40歳代で大きく異なるものがあります。
それは卵の「老化」ではなくて「質」。
老化は改善することができませんが質は改善することができます。
40歳代の女性の方はDr.から「年齢の問題です」と言われることが多いと思います。
ですが、上記の理由から、年齢をあまり気にせず、卵の質の改善に注力することで
こうのとりは貴方にほほ笑んでくれるのです。
「卵の質が悪いから妊娠できない」。
と言われる患者さんが少なくありません。
卵の質を決める要素は幾つかありますが、
そのうちの一つがTES(テストステロン)という男性ホルモンです。
テストステロンは精巣の間質細胞(ライディッヒ細胞)で、
コレステロールから合成される内因性男性ホルモンです。
何となく女性と(特に妊娠)とは関係のなさそうなホルモンですが、
このホルモンは卵胞の発現や妊娠に大きな影響を与えています。
女性の基準値は10~60ng/dl.とされていますが、
妊娠というのであれば20~50ng/dl.の範囲が適当だと思います。
(より理想を言えば25~45ng/dl.だと嬉しいです)
この値が高い時は多嚢胞卵巣症候群や妊娠が考えられ、
低い時は肥満や高血糖、そして拒食ややせ体質、運動不足、コーヒーの摂取があります。
テストステロン値が低いと顆粒膜細胞が少ない卵子ができます。
ここからの話は仮説ですが、現時点では多分正しいと思います。
《エストロゲンの作用で原始卵胞は発育卵胞となり、
卵細胞周囲の一層の胚上皮が肥大して顆粒膜となります。
テストステロンはこの時期にの卵成熟の過程作用することで、
卵子の質に大きな影響を与えていると考えられます》
テストステロンが低値になると、受精卵の分割に
悪影響が出て胚盤胞率が下がってしまうことになります。
それではテストステロン高値だとどうなるのでしょうか。
これはからだが妊娠した状態に近くなるので、
例え顆粒膜細胞の厚い、一見良さそうな卵が採れても、
受胎にはつながりにくくなりますし流産率が高くなります。
卵子の質を追求するあまり、妊娠しにくいからだになるのは、
本末転倒になりますので、
・DHEAを個人輸入して摂取
・Dr.からの処方でもTESの測定なしでの摂取は相談
・3か月以上の摂取の場合は再度TSEの測定
・サプリメントで亜鉛などの摂り過ぎには注意
・筋トレのしすぎ
こういった事も念頭に入れながら卵の質アップを行ってください。